『新サクラ大戦』感想
日記から抜粋しました。ネタバレ要素があるので、読む際はご注意下さい。
・大前提として、「中高生の頃に初代・2をプレイした個人的な思い入れと記憶の美化が絶対に入ってしまうのは人生の問題だから仕方ない」「でも評価は出来るだけそれを排除して公平にするのがヲタクとしてのプライドと『サクラ大戦』への愛と感謝」という意識で書きました。何度も言ってますが、私の世代のヲタクは10代半ばの多感な時期に『サクラ大戦(特に初代)』と『FF7』と出会ってワリと大きめに人生の世界線が移動してる人が多いはずです。
・まず結論として、やって良かったかどうかで言えば「良かった」です。『サクラ大戦』どころかゲーム自体から大分遠くなってしまった情けないヲタクですが、今再び「『サクラ大戦』をプレイする」という行為自体が個人的には幸せな時間でした。
・特に、『檄!帝国華撃団<新章>』が聴けただけで、個人的には限定版に壱萬伍千以上払った価値はあったと思っています。他人にフラットな立場から薦めるには全くワリに合わない値段だと思いますが、今再び「太正桜に浪漫の嵐」を感じさせてくれた感謝の御布施と思えば、気になりません。田中公平先生ありがとう!そしてありがとう!
・ただし、人に薦められるかと言えば躊躇してしまう、各所で芳しくない評価が見受けられるのも納得してしまう、期待値の高さや思い入れを差し引いてもそう言われてしまうのも仕方ない出来であったことも、また事実だと思います。
・私としては、兎に角「色々と惜しい」と感じました。良い要素は沢山ありましたが、その分それを活かしきれていないと歯がゆい思いをする点も多々ありました。バトルパートのバランスが悪いというのも良く耳にする意見だと思いますが、個人的には特に「各キャラ同士の関係」が、もっとやりようがあったんじゃないかなぁと不満顔、です(あざみっぽく)。
・これは多分ゲーム設定の問題もあって、以前は時間制限があったアドベンチャーパートが基本時間無制限になって各キャラと1回以上サシで話せるようになった結果、神山と各キャラの関係性が高まるのは確かに良く解るんですが、その分設定のワリにはキャラ同士の横の繋がりが弱く思えてしまいました。主人公との関係性だけでは単調で不十分、やはり色々な人間関係があってこそ人間性に複雑さと奥行が出て、キャラの魅力が大きく増すと思うのです。『サクラ大戦』最大のウリは何といってもキャラクターの魅力なのは間違いないワケですから、そこが凄く惜しい。
・具体的に言うと、さくらとアナスタシアの師弟はまぁ良いとして、さくらと初穂が幼馴染の親友なのにその設定がちゃんと活きるのが精々実家でのイベントだけってのは勿体無いし(二人で風呂で乳比べとかあっていいだろぉ、あァん!?)、他に例えば、初穂があざみを妹分として可愛がっているなら一緒にみかづきやカフェに居るとか、クラリスとアナスタシアが資料室で「どんな物語が面白いか」「こういう役を演じたいからこういう場面を書けないか」と話し合ってるとか、初穂やあざみにクラリスやアナスタシアが日本の伝統を尋ねるとか、海外出身で日本文化に興味があるアナスタシアとエリスが意気投合するとか(二人共歌舞伎座の前にいるのに一緒には居ない)、撃たれる伏線も踏まえてアナスタシアと司馬が演技と舞台装置の打ち合わせするとか、そういう細かいイベントがあってくれれば良かったなぁ、と。
・帝国華撃団存亡の危機が目の前にあるので、共通の目的を持っている結果として各人の仲が悪くないのは良い事かもしれませんが、全員無条件で仲良しってワケではないからこそ克服した後の方が帝国華撃団の一体感が印象深かったのかと思うと、ちょっと味気無かったです。いきなりさくらをボコボコにしちゃった上海の面子とあっさり仲直くなっちゃったり、倫敦や伯林と戦いを経て絆が生まれたと実感出来る場面が無かったように思うのは(伯林はシナリオ的に仕方ないかもしれないけど)、やはり勿体無い。すみれや織姫やロベリアみたいに周りとの関係で苦労させられるキャラが居た方が、終盤で全員が結束した時とかに絆が強い気がするし、そういう面子が隊長の元で一つになるからこそ大神さんがサクラ大戦の主人公だったなぁと改めて実感するのです。そう思うと、すみれ様は思った以上に重要なキャラで、やはり帝劇トップスタァは役者が違うなぁ。
・それ関連で、神山が何度も「華撃団の絆」とか「花組の絆」って使ってた気がしますが、終盤はともかく、上海華撃団戦あたりで「俺達の最大の武器は絆だ!」とか言っても、逆境で絆が深まるとはいえ序盤でそこまで強く言い切る程の絆はまだ実感出来てないと思ってちょっと引いちゃったり。帝国華撃団の皆と、更には各国華撃団と、色々な山あり谷ありを乗り切って最後の最後に「絆」と言うから説得力があるんだと思います。
・完全なるクサレキモヲタの邪推ですが、奇しくも『檄!帝国華撃団<新章>』の台詞が「わたしたちは一歩も引きません!」から「わたしたちはあなたと共に参ります!」に変わってる点について、「わたしたち」という一列横並びの集団が「あなた(神山)」との絆だけで繋がっているという意味合いに感じられて、元の「わたしたち」が「華撃団員が全員を取り巻く絆で結ばれている」のと対比になってしまっていると思えました。伝わりにくいのを承知で言いますが、華撃団が家族関係として、旧華撃団が(多少の例外はあれども)「大神さんを中心に全員が全員と直接繋がっている一親等の関係」に対して、新華撃団が「各人が誠十郎を介して繋がっている二親等の関係」というイメージです。
・ただ、上記の話に関して「じゃあ昔は?」と考えると、ここは特に個人的な過去の美化と長い年月を経た脳内二次創作が影響していて、ちゃんと調べたら意外とそんな事無いのかもしれないので、この点は声高に指摘するのは憚られるところです。
・各キャラについてですが、基本的に敵側以外は全員魅力的で、特にヒロインは皆可愛いと思いますが、その分総じてちょっと安直気味。さくらやあざみはともかく、アナスタシアは選択肢でちょっと違う方向性があっても良かったし、クラリスは例えデレた後も師匠の設定画にあるようなゴミを蔑む眼を発揮するとかして欲しかった。さっきも同じような事言いましたが、雨降って地固まるというか、波風あってこその冒険というか、そういう感じ。
・まず天宮さくらですが、堂々のパッケージヒロインだし幼馴染で結婚の約束してたりしてチョロいのは別にいいんですが、それ以外が何とも惜しいキャラ。物語の構造的に核の核で、背負わされた要素からすれば仕方ないとは思いますが、設定とか外側から先にガチガチに固められて人間としての中身がちゃんと定まっていないような、どこか類型的で魂が薄い気がしてしまいました。掛け値無しに可愛いのは間違いないと思いますが、佐倉綾音の声含め、多分女性に一番「あざとい」って嫌われそうだなぁとか思ったり。
・あざみは系統としてはアイリスやコクリコの伝統で、良くも悪くも期待通りの役柄だったと思います。その意味で言えば、チョロいのが一番気にならなかったのは良かったのかもしれないけれど、同時に他の面子を差し置いてこの娘をパートナーに選ぶのは甚だ疑問に思えてしまうのも伝統。シナリオは良く出来てたと思いますが、バトルパートは図抜けて使い勝手悪いんじゃなかろうか。
・クラリスは完全なる西洋御姫様で、その点の魅力は十分出ていたと思いますし、本好きイベントがかなりの頻度で出ていたのはキャラ的に結構美味しかったと思います。特に創作ノートの連続イベントはお気に入りです。敵にトラウマを刺激されるも克服して信頼度MAXというサクラ大戦のお約束が観れたのも大変宜しゅう御座いました。ただ、序盤にデレて以降は基本的に路線が変わらないので、後に行けば行くほど印象が薄らいじゃったかもしれない。創作ノート見られた反応とかも毎度恥ずかしがるだけじゃ単調だから、時には蔑むような視線と声が欲しかったですブヒブヒ。早見沙織は期待通りの仕事をしたけど、早見沙織を活かし切ったとは言えないかなぁ。
・アナスタシアは、見た目や設定のワリには捻った感じが無いのが、ヒロインが総じてチョロい印象の大元な気がします。誤解を恐れず言えば「異物感」があって、他のヒロインと立ち位置が違う感じはキャラ立ちにプラスに出ていたと感じられる分、もっと場をかき回す役割があったら作品全体でキャラの奥行が出せたと思えるので、何とも惜しい。スパイと判明した時もそんなに裏切られた感無かったし、裏切った理由と結末も安直で残念だったと思います(アレはせめて回想シーンが欲しい)。歩んできた道や境遇を知ってキャラソンの歌詞を読み込んだりすると実は元々の性格は一番真っ直ぐなんじゃないかと思えるので、いっそ復帰後に極端に乙女になるとかの方が面白かったかもなぁ。戦闘はボタン連打でOKってのは、プレイしている時は楽でいいけど、終わってみると「それもどうかなぁ」と首を捻りたくなりました。あと、お前司馬にちゃんと謝ったっけ?
・んで、私の個人的MVPは初穂。男勝りの姉御肌で巨乳という外側に対し、中身が意外と少女で脆いという緩急は王道にして効果的。特に、普段はトーンも言葉遣いも粗めなのに、乙女な部分が出ると恥ずかしがりな高くて可愛らしい声になるギャップがツボ。キャラソンの叫びの高い声とか、自分で「初穂ちゃん大勝利!」とか言っちゃう感じも可愛いです。なので、さくらの「実家に帰らせていただきます」回が初穂担当回に当てられているっぽいのは、当方納得が行きません。『DOD3』のゼロで薄々感じてましたが、内田真礼はこういうキャラが一番魅力的に演じられる気がします。最初は「まれいたそ無理して作ってて違和感あるなぁ」とか思ってたのに、慣れてくると「これしかない」ってくらいに合ってると思えてくるからヲタクって都合が良いですね。あと、薄い本で恥じらいながら一生懸命パイ〇リする展開が簡単に想像出来てしまったので、東雲神社の御神楽ハンマーで腐りきった性根を叩き壊して欲しいです。
・主人公神山誠十郎ですが、「帝国華撃団隊長」でありながら「大神一郎とは違う」という難しい役割でしたが、ワリと良かったと思います。時間無制限のアドベンチャーパートで旧作に比べて自由に動き回って色々なイベントがあったおかげで、キャラがちゃんと立ってたのかなぁと(その分周回の意味が薄れましたが)。欲を言えば、辛い過去があるのならもうちょいそれに関する話があると人間味にコントラストが付いて良かったかも。ただ、ゲキゾウくんはぶっちゃけ意味が薄かった。宣伝イベントのミニゲームとかあれば良かったのになぁ。
・他で言えば、すみれさんがせっかく出てるのに全体的にダウナー気味なのが残念。シナリオ的に仕方ないとは言え、どうせ出すならもっと高笑いして欲しかった。司馬は良い杉田でした。カオルさんはもっとすみれさんと直で絡ませたら美味しかったなぁ。こまちさんとひろみさんは癒し。いつきちゃんは油断してたので、ちゃんと曲聴いて唸りました。師匠は続編前提かしら?
・上海華撃団は、最初のリンチさえ除けば、まぁそこそこ出番あってマシだったと思います。倫敦は「ランスロットがさくらをライバル視する」という設定から抜け出せなかった印象で、伯林の方がキャラ立ちはしてたんじゃないかしら。エリスさんの滲み出る良い人感が素敵。
・それから、はっきり言って、アニメ絵のクオリティがお世辞にも高いとは言えない。
3の3億OP(都市伝説)を再現しろとは言いませんが、『サクラ大戦』というブランドを名乗るなら、一目見て感じられる「そんじょそこらのアニメとはレベルが違う」クオリティを提示して欲しかったです。3Dの出来が良い上に毛色の違いがあるのを差し引いても、アニメの出来が大して良く感じられず「せっかくアニメにした」というお得感が無くて残念でした。
ただまぁこの件に関しても、過去作品はアニメ絵の立ち絵だった分全体の違和感無しでアニメーションを見れるお得感があったワケだし、過分に個人的な思い入れが入っているとは思います。初代の「アニメをゲームでプレイ出来る」というのは、前例が無かったワケではないでしょうが広く世に知らしめたのは『サクラ大戦』だったと思うので、当時としては革命的で物凄く衝撃的だったなぁと今更実感。流石は第一回CESA大賞。
・シナリオは、まぁだいたいどこでも言われてますが、華撃団と歌劇団の存亡と再興、華撃団大戦、降魔との戦いの3本柱がそれぞれ中途半端で終わってしまったなぁという印象。ラストに向かって収束するという流れはわかりますが、それにしてはボリュームが少ないのが否めない。この点もひたすら惜しいの一言。華撃団大戦削ってでも他を厚くして欲しかったです。
・後は、こいこい大戦は良いとして、各キャラのミニゲームも欲しかったです。出来はともかく、各キャラあるってのが重要。更に言えば各国華撃団のミニゲームもあって、華撃団大戦で、第一ステージはミニゲームやって、その結果次第で第二ステージに優劣が出るとか、そういうのがあればなぁ。
・とりあえずこんな感じで、自分に向けたまとめでした。DLCで真宮寺さくらの衣装を着た天宮さくらを見たら、喜ぶ気持ちと喜んじゃいけないような気持ちを覚えて、ヲタクって本当に面倒臭い。
・追記:後日TVアニメ版放送時に「どうなの?」と知り合いに尋ねられたので、私なりに説明した文章を追加しときます。
・真宮寺さくらは、基本しっかりしているけれど所々抜ける時もあるので、その際はフォローしてあげようというキャラだと思います。
・対して天宮さくらは、基本色々足りてないけど頑張ってしっかりしようとしている健気な姿が見えるので、そこを支えて導いてあげようというキャラ。設定の基礎が「真宮寺さくらへの憧れ」という曖昧なものである以上、ある意味では仕方ないのかもしれません。
・ゲームをやっていると、主人公神山=プレイヤーに基本無条件に懐いてくれている為、悩んだり迷ったりするけど頑張ってる姿を応援しようといったプラスの印象になり易いです。さくらはチョロインですが、失敗したり迷惑掛けられてもそこをフォローした結果で好感度が上がれば好きになっちゃう我々も十分チョロい。
・ただアニメの場合、神山不在な上に客観的な視点の描写になってしまうので、足りない部分や空回る印象が悪目立ちして要領の悪い迷惑キャラに見えてしまっている感は否めないと思います。ギャルゲーのキャラの魅力は多かれ少なかれプレイヤー=主人公としての当事者視点が影響してくるのは当然ですが、さくらは特にそれが顕著だと改めて気付かされます。
・そもそもさくらが副隊長である点についても、ゲームをプレイしてさくらをパートナーに選んだ経験がある人からすればまぁ納得出来る話ですが、未プレイ勢には「何故こんなさくらが副隊長?」と思われるのも仕方ないなぁと。パッケージヒロインというだけでは超えられない壁がある。
・それ以外の不備や不満点も含め、どうにも「未プレイ勢にゲーム購入の動機を与える」というのが今回のアニメの制作意図のように見えるので、そこを出発点とする以上はこういう事態が起きてしまうのはある意味仕方ないのかもしれません。
・好意的に考えるなら今後の展開で、神山不在でもしっかり一人立ち出来るよう成長するということになれば、真宮寺さくらと同じキャラの立ち位置になれるかもしれないので、そこを期待して視聴を続けようかと思います。
・以上、攻略経験のある立場からの天宮さくらのフォローでした。
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